<ここまでの話>*正覚寺セクシー*前編

金曜日の夕暮れ時。そのマンションの住人はベランダに出て、正面に見える観覧車を眺めていた。娘は、サビ付いた鉄骨にツタの絡まる観覧車を指差して尋ねた。

「パパ、あの観覧車は、どうして動かないの?」

『ツタが絡まっているからだよ。』
「ツタが絡まったから動かなくなったの?動かなくなったからツタが絡まったの?どっちが先?」
『ニワトリが先か卵が先か、みたいだね。でもパパは<チキンの卵とじ>を食べて、そのあと<チキンの卵とじ>のウンコを産むから、パパの方が先だね。ハッハッ…ニワトリも卵もパパのお尻から産まれるんだ、すごいだろ。ハッハッハッ…』


パパは得意そうに笑った。【一休さんのモノマネのつもりの関根勤のモノマネ】のつもりの小一時間が、パパにとっては最大の家族孝行だった。

パパの割り切れないヤーな返し。娘にとって小一時間は長かった。昔のプロ野球中継を見せられるほどの長さに感じた。でもパパは熱心だった。
かつて星野ジャパンがオリンピックの野球ルール改正に猛反対したために、インターネットによる決議投票が行われた。しかし、投票入力を改ざんしたIOCアカラサマランチ会長の政治的謀略で、オリンピックどころか日本国からプロ野球がなくなってしまったのだ。野球観戦という生きがいの喪失。以来パパは、こうやって娘と会話のキャッチボールをすることがプロ野球復活への石拾い=地固めだと信じこんでしまった。だからその小一時間はキャッチボールのように単調でクドかった。



それにパパは、観覧車が回らない理由を言いたくなかった。観覧車が回らない事と、謎の村長暗殺事件との関連。観覧車が設置されたあの土地の地主と、生前の村長との歪んだ関係。その関係を隠すために身代わりとなって、臭いメシを食ったのだから。一度は死刑を宣告された伝寺龍之介が、刑務所を思い出す会話を避けたがったのは当然だ。

『カエラ、今日は8月29日。カエラ大好き焼き肉の日だ。今日はパパの会社のお友達が、平戸牛とオランダビーフのハーフ【ダッチ平戸さん】を連れてきて、霜降りダンスを見せてくれっぞっ。焼けっぱなからペロリンピック食べにゃんと。』


ピンポン!カチャッ….ズカズカズカ……


《龍チン、開いてるから入るわよ〜。【ダッチ平戸ちゃん】早く焼かないと、霜降りの腰が動かなくなって、アタシいかないわよ〜ダッチ。キャハハハ…》
「いらっしゃ...キャーッ!
赤迫ボンデージ!……にしおかすみこ似のおネエさん!」
《キャーッ!オッサン化炭素中毒の…アンタなんでここに…エッ?アンタ龍チンの娘?》

「はい、伝寺カエラと申します。ってかナンデあんとき駅前でアタシに頭突きくらわしたんですか。」
《だって龍チン、いやアンタのパパと座・和民で一発いや一杯やるとこだったから急いでてさ。》
『なんだ、オマエたちお知り合いかぁ…それなら…』
《『「それなら焼き肉が早い。」』》


【それなら話が早い。】を、【それなら焼き肉が早い。】

という龍之介の口癖、いや伝寺家の家訓を3人は一発でハモっていた。…さて、この先の真実を公開せずしてこの連載微小説はここで終わらされるが、その焼き肉会、宴たけなわに歌われた合唱曲はもちろん、3人を地獄から引きずりあげた霊の曲【あの世がいいとは限らない】であったことは言うまでも…言っちゃう。
【あの世がいいとは限らない】
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注)*上記の微小説は<ザ・ながさき>617号(2008年8月22日発売)の狩須魔緒のコラム【あの世がいいとは限らない】の欄に掲載されたものでござる。このたび長崎国外のファンタジーズコアのファンのためにリミックスしてアップ!尚、なぜだか(笑)これにてこの<ザ・ながさき>の連載は終了させられた。根性ナシの長崎国め。
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- 2008/09/05(金) 11:02:05|
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<関連微小説>【赤迫ボンデージブルース】*後編
*話題のエコカー=ハットリンガーのエンブレム。
プルプルプル…
火口自動車と
浜活造船所が共同で開発した話題のエコカー=ハットリンガーは、やっぱ
ヒグチだけあってモヤシの発芽エネルギーで動く。もちろん走行音が静かでプルプルという音しかたてない。それは、空腹時の…お腹が鳴る音=グビュ〜に近い。しかも純なヤングの初デート中、女の子がオナラをしてしまった瞬間に「アハッ、オレお腹ペコペコみたい。」と間髪入れずフォローする男の子=
吉岡秀隆の笑顔のように微妙な音。しかしグビュ〜では、そのエコカーの販売促進に繋がらないと主張した広告代理店グラバー社が、走行音はプルプルプルという表現で統一するように、と押し切った。
蒼井優に読ませたいCM企画のキャッチコピーは…
【プルプルプル…今なんか通った?…ハットリンガー、静かにデビュー。】
ところが広告戦略会議の時、モテようとして最後のフレーズを、
【…ハットリンガー、静かに
グビュ〜。】
と大声でプレゼンした男がいたんですよ〜。
ヤッちまったなあ〜。元も子もない失言をやっちまったそのコピーライターD氏は、即刻クビになり、同時に蒼井優の起用案もボツになった。

プルプルプル…グオン。話題のエコカー、ハットリンガーは、観光客の三歩うしろに妻のように寄り添って停車した。シュイ〜ン…ドアが開く。
『ハイこれ、正覚寺セクシーでございます。ワイロと根性なしの村=長崎シティへようこそ。早速ですがお客様、ノルかソルか、どちらにいたしましょうか。』
「…じゃ、反るの方で。」
『ラジャ・マハラジャ。』
と答えると、センサーがマハラジャという音声を察知して反応。車内のi-PODからインド音楽が流れ始めた。タブラがパカボコと単調なリズムを打ち、シタールがビヨンビヨンと奏でる中。手を合わせた運転手はお約束通り、首を左右にクネクネしながら目をキョロロンパ。
高田純次にクリソツのその運転手は白目を利かせながら反り返り、後部座席のお客様に向かってブリッジした。
*長崎の眼鏡橋。
『ハイこれ眼鏡橋でございマッスル〜。橋の上にコイが一匹躍り出て、ピ〜チピチのポヨンポヨ〜ン。』
「よかよかよかよかヨカチンチ〜ン!ハッハッハッハッ…」
すっかりご満悦の観光客は、運転手がブリッジした股間から、ピョコピョコと突き繰り出すヨカチンチンに惜しみないエールを送る。そして輪投げの要領で、
レイやミサンガを掛けまくった。ハワイの花輪、ブラジル刺繍糸、甲子園の千羽鶴…等あらかじめ車内に陳列された輪を、乗車する客が選んで、運転手のヨカチンチンに投げ掛ける。それがヨカ運賃だった。値段は回転寿司の如く輪のサイズやネタによって様々。観光客は自由料金をトコトン楽しんだ。
*ミノアカのレイ。
「君は立派だね。直径が大きい。ハッハッハ...ミサンガじゃ小さくて掛からんぞ。値段の高い輪っかばかり掛けさせおって...万札がいくらあっても足りんよ〜ハッハッハ。やあ立派だ立派だ〜そのヨカチンの反りっぷり。きっと苦労したんだねぇ...。」
『輪を持って貴しとなす。聖徳太子と書いて性得フトシと読んでおくんなまステ。』
…とガイドする運転手の名は、伝寺龍之介。69歳。プロドライバー。正覚寺セクシー勤務。
長崎さるく博で壊滅したタクシー業界を逆手に(安くで買い)とり、正覚寺セクシーを起業。そう…あのグラバー社をクビになり自殺直前、例の曲を聴いて一念勃起。現在に至る。
霊の曲とは…【あの世がいいとは限らない】
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注)*伝寺龍之介の会社<正覚寺セクシー>の前にある長崎市の正覚寺入り口。【正覚寺セクシー】*後編へつづく。注)*上記の微小説は<ザ・ながさき>615号(2008年7月25日発売)の狩須魔緒のコラム【あの世がいいとは限らない】の欄に掲載されたものでござる。このたび長崎国外の
ファンタジーズコアのファンのためにリミックスしてアップ!尚、
後編は明日発売の617号(2008年8月22日発売)に掲載。
【正覚寺セクシー】*後編へ。
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- 2008/08/21(木) 11:02:21|
- 微小説/微笑説
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<ここまでの話>*前編
注)*長崎市内、思案橋電停を発車した、赤迫(アカサコ)行きの路面電車。
カエラは、思案橋からきた赤迫行きの電車の中で【オッサン化炭素】中毒になってしまった。働かない5時から男のタバコとアルコールのメタボ和えによる臭撃。衰弱したカエラは、目的地宝町の手前、長崎駅前で脱出。ゲロ寸前のカエラを救ったのが、インド塾で習った呪文だった。
「
イッコッコウさん、イッコッコウさん、噛んでみたらニャニもにゃい…げなイッコッコウさん、
イッコッコウさん、潰してみたら空だった…げな…」
無心になれるこの呪文がゲロの噴射を封じた。
注)*イッコッコウ(一口香)は、中が空洞のお菓子。長崎銘菓。
そこに現れたのが、真っ赤なボンデージに身を包んだ<にしおかすみこ>似のおネエさんだった。おネエさんはカエラの髪と自分の髪を交互に解かしながら尋ねた。

「アンタ、大丈夫?…花粉症?妊娠?硫化水素?...さあ〜三択だよ、どっち?!」
カエラは吐き気から口を抑えていた手を、素直に鼻の穴に戻し、薬指と人差し指を入れて精一杯答えた。
『…【オッサン化炭素】中毒です。』
「ええ?【オッサン化炭素】中毒か。畜生め!アタシの三択ハズシやがって〜…あいつら〜訴えてやる〜!」



この時既に、カエラは心の中で“微妙”だとは感じていた。このポンチピンチの局面に、応急処置のようでお互いの髪を交互に解かすだけの謎…。さらに瀕死のカエラに三択の質問を浴びせる。そして自分が出題した三択を外されたことに向けられた、猛烈な怒りのズレ。…しかし意識が遠のくカエラが、その“微妙”を疑うには、
ドコサヘキサエン酸が足りなかった。


パシャッ!ビシャッ!…【オッサン化炭素】中毒の発生源が充満する電車は、赤いムチの餌食だった。信号で停車中、ひとしきりムチを浴びせてご満悦の<にしおかすみこ>似のおネエさん。やがておネエさんは膝を突くと、
クロエのショルダーバックからスプレー缶を取り出した。そしてそのノズルでカエラの唇をこじ開けようとした。

カエラはビックリして尋ねた。
「何ですかコレ?…味ポンですか?オイガツオですか?」
『バカ言うんじゃないよ!…これは【オバサン化マンガン】のスプレー。【オッサン化炭素】を中和できる唯一のジェネリックさ。アンタ、もう大丈夫だよ。』
プシューーーッ!【オバサン化マンガン】のスプレーが勢いよく放たれた。
「ありがとう。」
『さ、つかまりな。
メモリード葬祭場まで送っていくよ。』
「いえ、た、宝町…」
と言い終える前にボコッ!、おネエさんはカエラに頭突きを一発お見舞いした。

片手で十字架をきったおネエさんは、スプレー缶の元栓を開けて、自分の息を思いっきり吹き入れた。
『ヴフゥーーーッ。』

そして、小声だが力強い低い声で
『満タン、オッケー!』
と首をタテに振ると、歌いながら歩道橋を一気に駆け上り<
座・和民>の方に走り去ってしまった。揺れる後ろ髪に残されていたメロディはそう【あの世がいいとは限らない】その曲だった。
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注)*行き止まりの電停、赤迫(アカサコ)。注)*上記の微小説は<ザ・ながさき>613号(2008年6月27日発売)の狩須魔緒のコラム【あの世がいいとは限らない】の欄に掲載されたものでござる。このたび長崎国外の
ファンタジーズコアのファンのためにリミックスしてアップ!尚、
前編は611号に掲載。
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- 2008/08/11(月) 11:02:11|
- 微小説/微笑説
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注)*長崎市内を走る、赤迫(アカサコ)行きの路面電車。

カエラはインド塾の帰り。赤迫行きの電車が思案橋からやってきた。西浜町から乗ったカエラはドロンとした満員電車のヌムッとする空気に萎えた。いったんはつり革まで伸ばした手を素早く縮め込むと…クサッと呟き、薬指と人差し指を鼻の穴に突っ込んだ。5時から飲んでる働かないオッサンたちが、タバコとアルコールと豚バラのメタボ和えを吐きちらしている。その臭撃に対して、カエラが耐え忍ぶ唯一のクノイチ技がこれだった。【中指で眼鏡を押し上げるふりをして、薬指と人差し指を、鼻の穴に、第一関節まで突っ込む。それが長崎美人の品格を保つ最も上品な拒否作法よ。】<NO!と言える長崎美人>の著者=カエラのお婆ちゃんが、その説をカエラに叩き込んだのは、今はメズラシ<嫁入り修行>のつもりだったのだが…。

カエラは指を第二関節まで突っ込むクセがついてしまい、それが快感となった。まさかカエラが、“鼻血の付いた爪を噛むと落ち着くんです”…と言って微笑むM女に育つとは、さすがのお婆ちゃんも御天道様も知るよしもなかった。おばあちゃんは既に他界して、お天道様は今日も夕空に焼けっぱち、とっくの時津に沈んでいた。
チン!〜停車ボタンを押すしかない。目的地の宝町まで耐えられなくなったカエラは、長崎駅前で自分の体を押し出した。電停に駆け下りると、倒れるように歩道橋の階段に座り込んでしまった。吐きそうな口を手で封じ、耐える。苦しんでいる真横に渋滞のバスが止まる。こんな時に限って見たくないモノが迫ってくる。バスのラッピング広告のミックスピザがカエラにゲロを迫る。皿うどんの広告写真がカエラに嘔吐の鐘を鳴らす。胃液の津波で胸焼けピンチ。ポンチパンチサワーが喉元までドクッときて、ゲロ噴射10秒前!

カエラは心の中で唱え始めた。
「イッコッコウさん、イッコッコウさん、噛んでみたらニャニもにゃい…げな
イッコッコウさん、イッコッコウさん、潰してみたら空だった……げな挟んでみたらぺったんこ、げなイッコッコウったら防空壕…げなイッコッコウさん、
イッコッコウさん、噛んでみたらニャニもにゃい…」
インド塾で教わった最後の切り札。苦しい時に無心になれるお呪いを、カエラは震えながら繰り返した。
注)*イッコッコウ(一口香)は、中が空洞のお菓子。長崎銘菓。
すると、かねがね様子がおかしいと思っていた<
にしおかすみこ>似のおネエさんが、信号待ちの電車の後部から飛び降りてきた。おネエさんはカエラの元にかがみこむと、血判を交わすように、カエラの髪と自分の髪を交互に解かしながら尋ねた。
「アンタ、大丈夫?…花粉症?妊娠?硫化水素?...さあ〜三択だよ、どっち?!」
カエラはその素っ頓狂な優しさに涙を流しながらも、おネエさんに気を遣いたくなった。嘔吐のために口を抑えていた手を、素直に鼻の穴に戻し、薬指と人差し指を入れて精一杯答えた。
『…【オッサン化炭素】中毒です。』
「ええ?【オッサン化炭素】中毒か。畜生め!アタシの三択外しやがって〜…あいつら〜訴えてやる〜!コラ〜ッ、降りてきんしゃ〜い!」

おネエさんは絶叫すると電車に向かって凄まじい形相でムチを打ち続けた。
「人生、逃げたって無駄さ。赤迫で行き止まりだよ。迫る赤とはアタシのこと、さぁ、オッサンたち、降りてきんしゃ〜い!」
おネエさんは確かに<
にしおかすみこ>似だったがボンデージのコスチュームは黒ではなく赤だった。カエラはおネエさんの赤迫っぷりに感動して思わずあの曲をシャウトした。曲はそう…
♪【あの世がいいとは限らない】♪だった。
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◎*後編*613号に続く。注)*上記の微小説は<ザ・ながさき>611号(2008年5月30日発売)の狩須魔緒のコラム【あの世がいいとは限らない】の欄に掲載されたものでござる。このたび長崎国外の
ファンタジーズコアのファンのためにリミックスしてアップ!
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- 2008/08/04(月) 11:02:03|
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